05. 受け止めるよ 何度でも














今日も半日は泣きあかしたであろう顔で
部室にやってきた先輩。
今月に入って何度目だよ、と思ったが
顔と声には出さない。
・・・敢えて声に出すなら、
3年の先輩はとっくに引退したでしょう、だ。


「酷い顔ですよ。」

俺の第1声はいつもこれだ。

「うるさい、慰める気がないならほっといてよ!」

ついさっきまで泣いていたと思ったら、
今度は怒りだした・・・
忙しい人だ。

先輩を一言で言い表すなら、
「男好き」だ。
今まで何人の男と一緒にいたところを見て来たことか。
相手の男が別の学校の奴だった時もあった気がする。
いつも、と言っていいほど隣りにいる男が違っていた。
幸い、と言っていいのか
いつも長続きはしていないようだが・・・。



「今回はどうしたんですか?」

ため息をこぼしつつも、
結局俺は先輩の恋愛相談?にのっている。
遠くで苦笑している鳳が鬱陶しい。

「名前で呼ばないでって言った。
そしたら怒られたんだよねー」

さらっとそんなことを言った先輩。

「原因は明らかに先輩ですよ。」

そう言った瞬間、
えー!なんで?と抗議の声をあげる先輩。

「だいたい、
どうして彼氏に名前で呼ぶな!
なんて言ったんですか?
理解に苦しみます。」

「んー」

先輩はしばらく
話そうか話さないか考えていたようだが、
秘密♪と言って話してはくれなかった。
・・・はぐらかされた。
そんなことを思っていたら、
先輩は気が済んだのか
帰っていった。
名前を呼ばせないだいたいの理由は
分かる気がする。



次の日も前日をそのまま繰り返しているのかと思うほど、
同じように酷い表情で
部室に顔を出した先輩。
そしていつものように恋愛相談が始まる。
先輩の話を聞いていて、ふと小さな疑問が俺の頭に浮かんだ。


「どうしてそこまで彼氏にこだわるんですか?」

思い切って先輩に聞いてみる。

「ん〜、
本当はすっごく好きな人がいてね?
本気で告白したんだけど
全然本気に取ってもらえなくて・・・
とにかく彼氏を作ればその人の見る目が変わるかもって!
そこでもう1回その人に告白したら本気に取ってもらえるかもって!!」

先輩は本気のようだ。


先輩はひねくれ者ですね。
その相手も相当なひねくれ者でしょうけど。」

「そだね、
でもさーその人すごく優しいんだよ?
いっつも私の話を聞いてくれて・・・
しかも何度も何度もだよ!」

そう言った先輩の表情は
今までとは比べ物にならないくらい
綺麗なもので驚いた。

そんな先輩の話を何度も頭で繰り返して再生していたら・・・
すべての音がなくなった気がした。
さっきまで聞こえていた
時計の秒針の音すら聞こえなかった。
かわりに聞こえてきたのは自分の心臓の音。


先輩、その人ってd・・・」

「目の前だよ!」

先輩は俺の言葉を遮った。
そして俺は自分の顔が赤くなっていくのが分かった。
無反応な俺に先輩は痺れを切らしたのか、

「私の好きな人の名前は日吉若だよ!」

と言いなおした。


俺は恥ずかしさで顔を背けたかったが、
先輩の凛とした表情がそれを許さなかった。

「・・・いつもいつも話聞いてくれて
ありがとう!
彼氏はまだ作れてないけど、
好きです!!」

そう言い終えると先輩は
急に顔を赤くしてうつむいてしまった。
俺の方が恥ずかしくなるだろ////

「つまり俺は先輩のことを
名前で呼んでもいいんですか?」

本当に俺はひねくれ者だと思う。

「うん!
だって好きな人にはちゃんと名前で呼ばれたい♪」

照れくさそうに笑う先輩。

・・・先輩。」

「あ!
今度わ・・・若に悩みができたらぜったい聞くからね!!」

「・・・それは俺に何か不幸なことが起きて欲しいんですか?」

「ちがうー!
でも私ばっかり聞いてもらってたら、
不公平じゃん!!」


そんな会話を繰り返しながら、
俺は・・・
俺だって同じ気持ちです、と思った。
恥ずかしいから口には出さなかったが・・・。





受け止めるよ 何度でも





☆あとがき☆


お題3作目でした!

受け止めるよ 何度でも

お題ものでたまには日吉目線もありかな?
と思って書きました。
なにを受け止めているんだか、
よく分からないような気がしました・・・


本を読みます!
知識を得ます!!

こんな駄文をここまで読んでくださって
ありがとうございました!!!!

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